七月十日 水曜日

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 袖を掴んで引き止めると、口先だけで礼を言って腕を振り払われる。  さすがにちょっと傷ついて下を向くと、静は小声で謝った。 「……すみません」 「……いや、おれも無神経だったかも。お前がそんなに言いたくないなら、もう訊かないよ」 「だから、ほんとに俺は誰にも告白なんてされてません、って」 「うん。そういうことにしとこう」 「…………」  静はいつも口では意地悪ばかり言うけれど、肝心なときは助けてくれると思っている。だから、こうまで告白されたことを否定するのには、何か理由があるのかも知れない。  静はいつも通りの無表情だけど、気のせいかちょっと元気がないようにも見える。やっぱり、心を許した友人に告白されたのが辛かったのだろうか。それとも、昨夜のことは、静が言うように、ただの夢だったのだろうか。  どれだけ考えても答えは出ない。  思うことがあるのか、静はどこかぼんやりしている。いつもよりは言葉少なく、ふたり並んで家路に就いた。 「しばらくはもう、外を歩きたくないな……」  ようやく自宅前に着いたときには直人はへろへろになっていた。早くうちに入ってシャワーを浴びたい。
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