七月十日 水曜日

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「途中で無意味に走ったりしたのは先輩でしょうが」  長身の幼馴染みはポストを確認しながら口を挟んでくる。その通りなので何も言い返せない。  背中に担いだスクールバッグから鍵を取り出す静にならって、直人も同じように鍵を取り出しドアを開けた。実のところ、直人の母は専業主婦で常時家にいるので、わざわざ鍵を使う必要はない。  だけど共働きで、帰宅後いつもひとりになる静の目の前でチャイムを鳴らしてドアを開けてもらうのは気が引ける。静とは疎遠になっていた時期もあるけれど、帰宅したときにこうして鍵を自分で開けるのは、すでに習慣になってしまっていた。 「じゃあなー」 「はい、また後で」  当然のように返してきた言葉に、やっぱり今日も部屋に来るつもりだろうかと首をかしげている間に、隣家のドアは閉じられた。まぁいい。その内分かる。  三和土で靴を脱いでいると、廊下の角からふわふわした塊が顔を覗かせた。隣家の飼い猫であるウィルが平然と橋本家を闊歩していた。つくづく主に似てあつかましい猫である。 「ウィル! お前、昨日はなんともなかったか?!」
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