七月九日 火曜日

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 涙目になって謝ると、へそ曲がりの幼馴染みは満足したのか、ようやく手を離してくれた。  掴まれていた手の平を振って痛みを逃す。半泣きになった直人を見やる静は、うっすら微笑んですらいた。 「お前、おれのこと虐めて楽しい?」 「すごく」  即答され、シンプルに性格が悪いと確信する。 「ったく、遠野って勉強も運動も出来てその上その容姿だろ。人生最初っからイージーモードじゃん。どこにそんなひねくれる要素あった?」  むしろ、その点ではここまで真っ直ぐに育った自分を褒めて欲しいくらいだ。  いつだって真横にいるヤツが、自分より何でもかんでも出来るというのは屈辱だった。それも、相手は自分より年下ときてる。  プライドを傷つけられることなんかしょっちゅうあったが、静が真っ直ぐに自分を慕ってくれていたから、邪険には出来なかった。  しかし男の矜持を折ってまで育んだはずの友情は、静が思春期を迎えると共に少しずつぎこちなくなり、今となっては風前の灯だ。  精一杯厳しい顔を作って睨みつけるも、静は猫のように捉えどころのない表情をしていた。 「だいたい先輩のせいです」
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