七月十日 水曜日

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 昼間の内に、もしまたウィルになることがあれば、何をするかは決めてあった。  まず、何よりも重要なのは、直人本体の安全を確認しに行くことだ。もし、直人がウィルになっている間、ウィルが直人になっていたら、何をしでかすか分からない。  手足は昨晩と同じく鉛で出来ているかのように重く、思うように動かない。  どうやら直人は今静の膝の上にいるらしい。部屋はやけに暗い。電気はつけていないようだ。  それでも月灯りだけで案外くっきり周りが見えるのは、猫の瞳のおかげだろうか。周囲を見渡して違和感を覚えるが、それが何なのかはまだはっきりしない。  やわらかく抱きしめてもらうのは気持ちがいいけれど、そんな悠長なことを言っている場合ではない。  どうにか静の腕から抜け出して、直人は違和感の正体に気付くことになった。  何と、そこは直人の部屋だったのだ。  どうして静が直人の部屋にいるんだろう? さきほどあんな気まずいことがあったのに、静が直人の部屋に来るなんて、いくらなんでも変だ。  これは夢ではないと確信していたはずなのに、にわかに雲行きがあやしくなってくる。
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