七月十日 水曜日

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 その上静は何をしているのかというと、寝ている直人をただじっと見つめているのだ。意味が分からない。  にゃおん、と小さく呼びかけてみるが、静は振り向いてくれない。  ウィルになってしまうのだとあれほど相談したのに、今直人がウィルになっていることにはまるで思い当たっていないようだ。  これは実力行使に出るしか、と爪を出したところで、静は思いもよらない行動に出た。  寝ている直人の頭の横に手をついて、ベッドに身を乗り上げる。何をする気だ!? と唖然として見守る直人の目の前で、静の顔がゆっくりと直人の顔に近づいていく。それはまるでキスをするみたいな――……、 (うわぁぁああああっ!!)  心の中で大声をあげた途端、視界は闇に閉ざされた。そしてそのまま、直人の意識は夜の底へ沈んでいった。
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