七月十一日 木曜日

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七月十一日 木曜日

 はっと目を開くと、もう朝が来ていた。  荒い息を吐きながら、ゆっくりと起き上がる。カーテンから差し込む夏の光が照らしているのは、いつもと変わらない平凡でありふれた自室。  汗を吸って湿ったパジャマ代わりのTシャツが気持ち悪い。深呼吸をして落ち着こうとするが、ドキドキと騒ぐ鼓動はなかなか収まらない。  なぜだろう? ちゃんと目覚めることが出来た。手足も元通り動く、直人の身体に戻っている。なのに、不安から抜け出せない。よくわからない焦燥に支配され、冷え切った両手で自分の身体を抱きしめた。  立てた膝に額を擦り付けた瞬間、昨夜ウィルになっている間に見た光景が脳裏に浮かんだ。  あれは、一体どういうことだろう。暗い部屋でじっと直人を見ていた静。最後には覆いかぶさって、まるでキスをしようとしているみたいだった。  昨日まではほぼ間違いなく現実に起こっていることだと思っていた。だけど、本当にそうなのだろうか。ひょっとして、直人の無意識が見せた願望だったりして。  そこまで考えて、ふと疑問が浮かんだ。  そういえば、そもそも昨夜どうして静とキスすることになったのだろう。
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