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直人の家族の前では静はいつも特大の猫を被っていて、腹立たしいことに今のところ両親はしっかり騙されている。
だけど、八年幼馴染みをやっている直人はごまかせない。直人の顔を認めた瞬間、笑みの形にたわんだ静の目がわずかに翳ったのを、直人は見逃さなかった。
「おはよう、直人。最近静くんと会えないから、朝食誘っちゃった」
お気に入りの例のエプロンを身につけた母が上機嫌で伝えてくる。昨日の今日で、タイミングは最悪だ。まだ心の準備が全然出来ていない。
しかしこうなったら、覚悟を決めて向かい合うしかない。
避け続けることなんて実質不可能だし、後回しにすればするほど、気まずくなるだけだ。
腹の底に力を入れて、直人は食器を持ったまま目を泳がせる幼馴染みに笑いかけた。
「静、おはよー!」
長身に駆け寄り、思い切って後ろから無邪気を装い抱きついてみる。お日さまの匂いのする白いカッターシャツに顔をうずめたとき、胸が痛んだけど、そこは知らんふり。
「っ! なお、ちょ、」
「また相談乗ってくれよー頼むなー」
動揺しているところに付け込んで畳み掛けると、狙ったとおり目を白黒させて首を縦に振ってくれる。
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