七月十一日 木曜日

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 普段だったら即行で殴られているところだが、母が見ている手前、手は出せまい。  これで、昨夜の気まずい空気が、なかったことになればいいのだけど。  表情には出さずに、内心びくびくしている直人を困ったように見やり、母はため息をついた。 「もう、あんまり静くんに頼っちゃだめよ」  母の手元を覗き見ると、フライパンの上には目玉焼きが四つ、じゅうじゅうと音を立てていた。食欲をそそる美味しそうな光景に、たちまち腹の虫が騒ぎ出す。 「静くん、じゃあそろそろお味噌汁よそってくれる?」 「はい」  手早く味噌汁を盛り付けた静が、さりげなく直人の腕を外してから、ダイニングテーブルに人数分のお椀を並べていく。母と仲むつまじく朝食を用意するすがたは、まるでよく出来た孝行息子の見本のようだった。  本当の息子としては、立場がない。 「直人、シャワー浴びるなら早めにあがっておいで。ご飯が冷める」 「……わかった」  その上気遣う言葉を投げられ情けない気分になりつつ、とぼとぼと浴室へ向かった。  シャワーを終えて、制服に着替えてからダイニングに戻ると、もう食卓の用意は整っていた。
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