七月十一日 木曜日

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 どうしたら猫になるのを止めることが出来るんだろう。  分からないことだらけで、胸がもやもやする。初めて自覚した自分の恋心との付き合い方さえ、まだ決めかねているのに。  それに、二日前に目撃した、静の告白シーン。あれは果たして本当に起こった出来事なのだろうか。今となってはもう自信はないけれど、もしあれが現実なら、静は何て返事をしたんだろう。 「あのさ、静、おれ今日早めに学校行くわ」 「なんで?」  箸を動かす手を止めて尋ねてきた静に、目を合わせずに答える。 「……優に、あのこと相談してみようと思って」  優は少し離れたところに住んでいて、いつも電車とバスを乗り継いで高校に通っている。テスト期間中だから、放課後でも十分時間はあるけど、少しでも早く信頼出来る友人に聞いて欲しかった。 「そういえば、さっきも直人、相談とか言ってたわね。何か悩みごと?」  母が不思議そうに聞きとがめてきたが、大したことじゃないと笑って誤魔化す。 「ごちそうさまでした。おれ、バス来るしもう行くわ」  食器をきれいに空にして、流しに運ぶ。
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