七月九日 火曜日

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「ふぅん?」  乗り物に酔いやすい直人は、いつもは自転車で登校している。朝のバスは混んでいるから憂鬱だけど、自転車が直るまでは仕方ない。  焼け付くような日差しの下、並んで歩き出す。バス停が見えたとき、運よくちょうどバスが到着した。  バスに乗り込み、空いた空間を探すが見つからない。仕方なく狭い隙間を縫うようにして捕まる場所を探していると、静に肩を叩かれた。 「ほら」  白いつり革を押さえて、直人に捕まるよう促している。静自身は天井のそばを走るポールに無造作に握りしめていた。  彼なりのやさしさなのだろうが、直人にとっては面白くない。  直人は昔からそこそこ食べる方だし、運動部でがっつり動いているのに、縦にも横にも伸びにくい。バスケ部なのに百七十ないのはさすがにつらく、身長のことはかなり気にしている。  顔立ちも、間違っても格好いい、と言われるタイプではない。割り切ってかわいい系の髪形にしてみたら意外と女子に受けがよく、そこにはそう不満はない。けれど、気軽にかわいい、なんていってもらえる分、本気で好きになってもらえる率は低いだろうな、と思う。
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