七月十一日 木曜日

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 静は下ろしていた腕をそろそろとあげて、指の先でそっと直人の頬に触れた。 「目元赤いの……どうせあの後泣いたんだろ。それとも昨夜、あんた俺に何されたか、もう忘れた?」  静のその見慣れない表情も、告げられた言葉もあまりにも意外すぎて、一瞬反応が遅れた。 「え? あれ? あのキスってやっぱお前からしたんだっけ??」  驚きのあまり、我ながら素っ頓狂な声が出た。 「は?」 「いやだって、あんまり突然だったから、いまいち何が起きたのか、ちょっと自分でも確信が持てなくてさぁ。よかったーお前からしたんだったら俺が怒られることないよな!」  安堵のあまり、目の前にある手首をがっちり掴んでゆさゆさ揺さぶる。静はぽかんとして、されるがままになっていた。 「つか何でお前あんなことしたの? いつものいじわるの新しいやつ?」  向こうからしてきたなら、こちらには訊く権利があるだろう。笑顔を向けると、途端に静の瞳が半眼になった。 「……ここまで鈍いと、ただただ腹が立ちます」  頭の上に手を置かれた、と思ったら、避ける暇もなかった。 「イタタタタ! アイアンクロー止めて! 痛い!」
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