七月十一日 木曜日

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「先輩ってあまりにも無神経だと思いませんか?」 「思いません! 神経ありますめちゃくちゃ痛いです!」 「痛覚だけは神さまが残しておいてくれたのかな」 「どんな鬼畜な神さまだよ!」  半泣きになって首を振ると、ようやく静は手を離してくれた。  静がいじめるせいで、年々涙もろくなってきている気がする。泣けば止めてくれるということを、頭で理解するより身体が覚える方が早かったらしい。  すかさず距離をとって警戒する直人に、静は背を向けてリビングに続くドアを開けた。 「そろそろ家でないとバス来ちゃいますよ」 「え、やばい! や、でも待った、理由まだ――……、」  好奇心のまま話を続けたかったが、静はバタンとドアを閉じてしまった。  さすがにこれ以上追いかけて問いただす時間はない。  自室にかけあがりかばんを取ってくると、急いで玄関を後にした。 「直人、こっちこっち!」  スクールバスに乗り込むと、すぐに優が気づいて声をかけてくれた。  ちょうど優の横の席が空いていたので、ありがたく座らせてもらう。珍しくバスの車内は比較的空いていた。 「で、どうしたの、相談って。改まって珍しいよね」
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