七月十一日 木曜日

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 あらかじめ話がしたいのでバスに乗る、と伝えてあったからか、腰を下ろすなり優は尋ねてきた。 「うん、あのさ、おれ実は昨日からずっと悩んでて。その、急に信じられないかも知れないんだけどさ、」  絶対に信じてはもらえないだろうことを口にするのは勇気がいる。膝の上にスクールバッグを置いて、ちょっと口ごもった直人に、なぜか優は食い気味にうなずいた。 「うん、大丈夫。僕、多分驚かないから安心して」  隣に座る直人より少し背の低い友人は、妙に自信ありげに微笑んで見せた。何をもってしてそう思ったのは不明だが、謎の包容力を発揮するクラスメイトに僅かに勇気付けられる。  意を決して向き直ると、優はさらに励ますように笑みを深めた。  なぜだか彼の受け入れ態勢は準備万端だ。ここまでお膳立てされた打ち明け話など、そうないだろう。  少し不思議に感じつつ、直人は思い切って口を開いた。 「そう? じゃあ……あのさ、あの……おれ、二日前から寝てる間に猫になっちゃうんだ」  言ってから数秒は待った。  ひょっとしたら数十秒だったかも知れない。  優はもともと大きな目をさらに見開いて、まじまじと直人の顔を見ている。
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