七月十一日 木曜日

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 結果として、漠然とした内容になってしまったが、それを聞いた優は不思議そうに首をかしげた。 「それ、今の遠野と何が違うの?」 「いや、だって、あいつすぐおれのこと殴ってくるじゃん。意地悪ばっかり言うし。そういうの、全然なかったんだよ」  イギリスに居たころの静と今の彼とは、はっきりいって全くの別人だ。やさしかった憧れの少年は、中学生にあがると同時に急によそよそしくなり、直人から距離を置くようになった。 「それがさ、中学入学したころから何か急に無視するようになってさ。最近はまた普通に話すようになったけど、二年間くらい口もきいてくれなかったんだよ」  何が気に入らないのか全く分からないまま避けられていた時期は、ずいぶん落ち込んだ。 「それは……」 「普通に嫌われてると思うだろ」 「遠野の自業自得というか……なんにせよ、気の毒だね」 「んー、まぁ最初は結構ショックだったけど、途中から慣れたし。今はまた普通に友達? みたいな関係に戻ったし、あんまり気にしてない」 「……直人じゃなくて、遠野の話」 「はぁ? 何であいつが気の毒なんだよ。可哀想なのはおれだろ?」
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