七月十一日 木曜日

22/54
前へ
/165ページ
次へ
 ふたりでかばんを持って教室を出てから、顔を見合わせた。 「どっか人気のないところがいいよね?」 「……そうだ、体育館は?」  テスト期間の今、部活動はどこも休み中だ。よほどの物好きでなければ、体育館に来ないはず。  そう思って急ぎ足で体育館へ向かったのに、果たしてそこには物好きが複数人いた。勉強をしなければいけない期間だからこそ、身体を動かしたくなるのだろう。どこから取り出したのか、思い思いにボールを投げたりラケットを振り回したりしている。  その中でもひときわ目立つ、長身のふたりが目に飛び込んできた。 「あれ? 遠野と篠塚じゃない?」  バスケットゴールの真下で静と篠塚が競り合っていた。ふたりとも制服を着たままで、静の手には当然のようにバスケのボールがある。 「何してんの?」  驚いてコートに近寄ると、はっと気づいた静が動きを止めた。その隙にボールは篠塚の手にさらわれ、ライン外までドリブルで運ばれた。  その場で軽くジャンプしてシュートしたボールはきれいにリングを通り、バウンドするそれを苦い顔をした静が拾う。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

210人が本棚に入れています
本棚に追加