210人が本棚に入れています
本棚に追加
「明日でテスト週間終わるから、部活始まるでしょ。一応体慣らしておこう、って遠野に誘われて」
これ見よがしなドヤ顔をした篠塚が、振り返ってはきはきと答える。どうやらプレイ中に尋ねた質問はちゃんと聞こえていたらしい。妙なところで小器用な後輩である。
「お前、いつもそんなことしてたの?!」
驚いて声を上げた直人から顔をそらし、弾んだ息を整えながら静は目を伏せた。
「いつも、ってわけじゃないですけど」
直人の目から見た静は、何だって飄々とこなしているイメージで、人知れず努力してることがあるなんて思いもしなかった。
静と篠塚は体格もバスケのレベルも拮抗しているから、確かにワンオーワンの練習には最適な相手だろう。肩慣らしといいつつそれなりに熱が入ったのか、ふたりともカッターシャツが汗で少し張り付いている。
こっそり感動している直人を見下ろして、静は気まずそうに頭を掻いた。
「橋本先輩のせいですよ」
「へ? おれ?」
ぽかんと自分の顔を指差した直人の後ろから、優が顔を出して笑う。
最初のコメントを投稿しよう!