七月十一日 木曜日

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「明日でテスト週間終わるから、部活始まるでしょ。一応体慣らしておこう、って遠野に誘われて」  これ見よがしなドヤ顔をした篠塚が、振り返ってはきはきと答える。どうやらプレイ中に尋ねた質問はちゃんと聞こえていたらしい。妙なところで小器用な後輩である。 「お前、いつもそんなことしてたの?!」  驚いて声を上げた直人から顔をそらし、弾んだ息を整えながら静は目を伏せた。 「いつも、ってわけじゃないですけど」  直人の目から見た静は、何だって飄々とこなしているイメージで、人知れず努力してることがあるなんて思いもしなかった。  静と篠塚は体格もバスケのレベルも拮抗しているから、確かにワンオーワンの練習には最適な相手だろう。肩慣らしといいつつそれなりに熱が入ったのか、ふたりともカッターシャツが汗で少し張り付いている。  こっそり感動している直人を見下ろして、静は気まずそうに頭を掻いた。 「橋本先輩のせいですよ」 「へ? おれ?」  ぽかんと自分の顔を指差した直人の後ろから、優が顔を出して笑う。
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