ヘーゼルの魔法

七月十一日 木曜日

「直人、遠野が入学する前から、今年はすごい一年が入ってくる！　ってバスケ部のみんなに宣伝してまわってたもんね。イケメンで身長高くて勉強も出来て、その上バスケもめちゃくちゃ上手いって」
「おおおお、おれそんなこと言ったかな！？」
　確かに、静が直人と同じ高校に願書を出した、と聞いたときはずいぶん浮かれてしまって、部活のメンバーに静の話をしたかもしれない。
　隣家に住む出来のいい幼馴染みは、直人にとってコンプレックスでもあり、同時に自慢でもあるから男心は複雑だ。
「橋本先輩がおおげさに触れ回ったせいで、これでもプレッシャー感じてるんです」
　拗ねた物言いは珍しく年下っぽくてちょっとかわいい。静のことをそういう意味で好きなんだと自覚してから、何気ない彼の表情に胸をどきどきさせてしまう。
「ごめん。でもおれ、お前が同じ高校に来るって分かったときから、お前とまたいっしょにバスケが出来ると思うと嬉しくて」
　一歩近づいて笑いかけると、静は手のひらで口元を覆ってそっぽを向いた。見上げた頬が少し赤くなっているから、ひょっとしたら照れたのかも知れない。