七月十一日 木曜日

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「そう言われるとますます行きたくなります」 「お前ってほんとに性格悪い……」  肩に置かれた大きな手はさほど力をこめているようには見えないのに、外れそうにもない。絶対に着いてくるつもりだという強い意思を感じて、ため息をついた。 「えーと、じゃあ、篠塚も来いよ」  腹立ち紛れに篠塚にも声をかけてみる。  そういえばほとんど忘れかけていたが、背の高いもうひとりの後輩は3Pシュートを決めた後、なぜかそのまま遠巻きにこちらを眺めていた。  急に呼びつけられた篠塚は慌てている。 「何の話ですか? てか、何で俺まで!」 「……つか篠塚、どうしてそんな離れたところ突っ立ってんだ?」 「あんな至近距離で見詰め合ってふたりの世界を作り上げてるところへ突っ込むのは、いくら優秀なポイントガードの俺でも無理です」 「何言ってんの?」  意味の分からないことを言い出した篠塚に疑問符を浮かべ、静に眼差しで問いかけるも、彼は答えてくれない。  しかしなぜか向かいに立つ優は大笑いしている。  優に理由を訊いてみようと口を開きかけたが、肩に置かれた手にくるりと向きを変えさせられてしまった。
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