七月十一日 木曜日

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 だから体格がよく、運動神経もいい同級生の篠塚は、彼にとってずいぶんと気楽な相手なのだろう。これまで何度も遠慮のない言い合いをしているのを見たことがある。その様子はまさに気の置けない仲間、といった感じだ。  篠塚は友達が多そうなタイプだけど、彼にとっても静は格別一目を置いているように見える。まさに、お互いを尊重している、理想的な関係だ。  産まれ月は数ヶ月しか違わないけれど、直人なりに一応ふたりの先輩だという思いがある。これからもこの友情を温かく見守ってやりたい。  我ながら懐が深い、と内心自画自賛しつつ、後輩たちに笑いかける。すると静はなぜか持っていたボールを取り落とした。 「橋本先輩、何か絶対誤解してますよね?!」 「ははは、大丈夫。わかってるよ」  バウンドするそれを拾って篠塚に渡してやる。篠塚はボールを受取りつつすり足で後ろに下がる、というちょっと気持ち悪いテクニックを披露しながら静に手の平を向けた。 「おい遠野、試合中の目で俺を見るのマジで止めろ! お前がマークすべき相手は俺じゃない!」
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