七月十一日 木曜日

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 静がゆらり、と篠塚に近づき、篠塚はボールを持ったままおろおろと間合いを計っている。何となく静がコブラツイストを狙っている気がするのは、今まで散々実験台にされてきたゆえの予知能力だろうか。 「あいつら、何してるんだ?」 「直人、いいから行こう」  ひーひー笑う優に背中を押され、体育館を後にする。背後から篠塚の悲鳴が聞こえてきたけど、当然誰も相手にしなかった。  ファストフード店に入ると、ジャンクな匂いに身を包まれた。途端にぐぅ、と腹の虫が騒ぐ。  どれだけ悩みごとがあっても、きっちり腹は減る。壁に貼ってあるメニューを眺めていると、ますます食欲が湧いてきた。  複数の学校から程近いこの店は、いつも学生でにぎわっている。しかしラッキーなことに、今日は時間を外したせいか比較的すいていた。  炎天下を歩いてきたから、空調の効いた室温がうれしい。手でぱたぱた扇ぎつつ、おのおの会計を済ませて、ボックス席へ移動した。  ちょっと食べにくい新作バーガーを攻略するのに夢中になっていたら、いつの間にかみんながこちらを見ていた。無言の視線に促され、仕方なく顔を上げる。
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