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そして、その横には魔女が磔されていた。醜い姿だ。髪はぼさぼさ、指先はぼろぼろ。手首を杭で打ち付けられ、汚れたその血が腕を伝っている。手足は力なくぶら下がっていて、顔も伏せている。
「うう……」
どんな顔かと少しのぞき込んでみたら、魔女は泣いていた。それを見て俺はどうしようもなく腹が立った。
足元に転がる小石を拾い上げて、魔女の顔に思い切り投げつける。
「皆を、母さんを、苦しめたくせに! 早く死ね!」
思い切りそう怒鳴ると、広場の皆が沸いた。呼応するように人々が魔女に石を投げつける。
「燃やせ! 燃やせ! 燃やせ!」
誰からともなく、皆でそう言った。
「燃やせ!」お前のせいで母さんが、俺もその声に混ざってこれまでの思いをぶつける。
そして司祭様が魔女の足元に火を点ける。
断末魔を上げながら苦しそうに身を捩る魔女を見て、俺は心の底から、笑った。
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