1.薄氷の上で笑う

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 そして、その横には魔女が磔されていた。醜い姿だ。髪はぼさぼさ、指先はぼろぼろ。手首を杭で打ち付けられ、汚れたその血が腕を伝っている。手足は力なくぶら下がっていて、顔も伏せている。 「うう……」  どんな顔かと少しのぞき込んでみたら、魔女は泣いていた。それを見て俺はどうしようもなく腹が立った。  足元に転がる小石を拾い上げて、魔女の顔に思い切り投げつける。 「皆を、母さんを、苦しめたくせに! 早く死ね!」  思い切りそう怒鳴ると、広場の皆が沸いた。呼応するように人々が魔女に石を投げつける。 「燃やせ! 燃やせ! 燃やせ!」  誰からともなく、皆でそう言った。  「燃やせ!」お前のせいで母さんが、俺もその声に混ざってこれまでの思いをぶつける。  そして司祭様が魔女の足元に火を点ける。  断末魔を上げながら苦しそうに身を捩る魔女を見て、俺は心の底から、笑った。
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