オオカミ少女が「カプチェット・ロッソ」の青年に恋をした話

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 そうして一昨日、デートに誘われた。  あの時に断ることも出来たけど……一度で良いから、好きになった人とデートしてみたい。そんな誘惑に負けてしまって、結局OKしてしまった。  恋するとバカなことに走るって聞いてたけど……本当だったみたいね。  そして今さっき、フッてきた。  家に帰ってきた途端、ベッドに倒れ込んでシーツを濡らした。涙が止まらない。  これで良かったんだ。もう充分、楽しい思いをしてきた。これ以上、彼と関わってはいけない。  「カプチェット・ロッソ」には、もう行かないようにしよう。  アレコレいろいろと考えていると――ケータイが鳴り、ディスプレイを見る。  [非通知]と表示されているそれに、涙を拭って警戒心を強める。こうした場合は、顔も知らない敵からの連絡が多い。  用心しながら、ゆっくりと通話ボタンを押す。  「……もしもし?」  「よぉ、ハニーウルフちゃん?」  「アンタ……誰?」  「あぁ、そうだったよな。まずはハジメマシテ、だったな」  通話の相手は、以前アタシがハニートラップ後に始末した男の部下……つまりは残党のザコだった。  「アタシに何の用?」  「まぁまぁ、落ち着けって。まずはこの声、聞いて貰おうか」  響く、聞き慣れた声。悲鳴。  アタシの血の気が、サッと引いた。  「アンタッ……彼に何してるの!?」  「ハハッ、お前のボーイフレンド。良い声で鳴いてくれて助かるぜ」  「…………彼を返して」  「おーおー、恐い恐い。ボーイフレンド返して欲しいか? 欲しいよなぁ?」  「…………何が目的?」  「そうだなぁ……」  ――丸腰で、今から指定する場所まで来い。もちろん、1人でだ。  ブツリと、通話は一方的に切られた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加