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そうして一昨日、デートに誘われた。
あの時に断ることも出来たけど……一度で良いから、好きになった人とデートしてみたい。そんな誘惑に負けてしまって、結局OKしてしまった。
恋するとバカなことに走るって聞いてたけど……本当だったみたいね。
そして今さっき、フッてきた。
家に帰ってきた途端、ベッドに倒れ込んでシーツを濡らした。涙が止まらない。
これで良かったんだ。もう充分、楽しい思いをしてきた。これ以上、彼と関わってはいけない。
「カプチェット・ロッソ」には、もう行かないようにしよう。
アレコレいろいろと考えていると――ケータイが鳴り、ディスプレイを見る。
[非通知]と表示されているそれに、涙を拭って警戒心を強める。こうした場合は、顔も知らない敵からの連絡が多い。
用心しながら、ゆっくりと通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
「よぉ、ハニーウルフちゃん?」
「アンタ……誰?」
「あぁ、そうだったよな。まずはハジメマシテ、だったな」
通話の相手は、以前アタシがハニートラップ後に始末した男の部下……つまりは残党のザコだった。
「アタシに何の用?」
「まぁまぁ、落ち着けって。まずはこの声、聞いて貰おうか」
響く、聞き慣れた声。悲鳴。
アタシの血の気が、サッと引いた。
「アンタッ……彼に何してるの!?」
「ハハッ、お前のボーイフレンド。良い声で鳴いてくれて助かるぜ」
「…………彼を返して」
「おーおー、恐い恐い。ボーイフレンド返して欲しいか? 欲しいよなぁ?」
「…………何が目的?」
「そうだなぁ……」
――丸腰で、今から指定する場所まで来い。もちろん、1人でだ。
ブツリと、通話は一方的に切られた。
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