オオカミ少女が「カプチェット・ロッソ」の青年に恋をした話

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 どうして、あんな人を好きになっちゃったんだろう。  好きになっちゃ、いけない人だったのに……  ダメだと解っていながら、今日デートしてきちゃった。  なんとなく察してはいた。アタシたちは両想いなんだと……  予想していた通り、デート中に告白もされた――だけどフッた。しかも、こっぴどく酷い言葉で。  呆然とする彼を置いて、足早で去る。  歩いている内に、我慢していた涙があふれ返る。涙なんて、いつぶりなんだろう。むしろまだそんなもの、アタシに残っていたんだとさえ思う。  “ハニーウルフ”――それがアタシの、裏世界での通り名。純潔を保ちながらも、巧みなウソでハニートラップを成功させてきたことから、いつしかそう呼ばれるようになった。  純潔を護りながら男を堕とすなんてカンタンな仕事。用済みになったら、あとは好きに遊んで構わない。それが齢17を迎えた、アタシの殺り方(スタイル)。  この愛すべき生活を送り続けて4年――“その日”も、変わらない日常の朝だったと思う。  いつもどおり仕事を終え、シャワーを浴びてスッキリ。朝ごはん食べに出かけよーっとフラリ街に出た。  何食べようとプラプラ歩いていたところ、その店の看板がふと目に入った。 「カプチェット・ロッソ」  “赤ずきん”という名前の、そのカフェから漂う――美味しそうな焼きたてのパンの匂い。  よしっ、今日はここに決めたっ!  そんな軽い気分で入ったのが、今思えばきっと運のツキ。
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