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プロローグ
物心着いた時から、俺の隣にはみちるが居た。
子供の頃は、お転婆なみちるが男の子に間違えられ、おとなしかった俺が女の子に間違われた。
「なおちゃん」
そう言って差し出される手は優しくて、何度その手に救われただろう。
菜の花が一面を黄色に染め、野原を駆け回り淡いピンク色の桜が咲き乱れる春
強い日差しがキラキラと水面を照らす川で遊んだ夏
落ち葉を集めて焚き火をして、アルミホイルで包んだ焼き芋を頬張った秋
世界を一面、真っ白に染めたまっさらな雪景色に手を繋いで飛び込んだ冬
俺の世界には、いつだってみちるが居た。
おとなしい俺をからかう奴らが居ると、いつだってみちるが飛んで来て助けてくれた。
月日が流れ、俺の身長がみちるを追い越して、性別の違いを意識し始めたきっかけもみちるだった。
「なおちゃん」から「尚也」になったのも、その頃だったように記憶している。
俺の記憶の中には、いつだって向日葵のように笑うみちるの姿があった。
みちるの笑顔に、何度救われただろう。
きみのひまわりのような笑顔が、大好きだった…。
「尚也」
って呼ぶ声が大好きだった。
ずっとずっと……一緒に居られると信じてた。
みちる……もしも突然俺が消えたら
泣くだろうか?
悲しむだろうか?
怒るだろうか?
憎むだろうか?
……どんな形でも、みちるの思い出の中から自分が消えるのは嫌だと思った。
勝手だよな……。
俺は、全部忘れちゃうのに……。
病院帰りに見上げた空は、やけに綺麗で真っ青な青空が広がっていた。
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