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初めては全部きみだった
みちると付き合うと決まってから、俺は俺の両親とみちるの両親にきちんと話をした。
みちるは
「えぇ! 良いよ!」
と慌てていたけど、信頼してくれているお互いの両親にはきちんとしておきたかった。
母さんには驚かれ
「まさか尚也……、あんた、みちるちゃんを傷モノのに!」
って顔を青くされたけど……。
「そ! そんな訳無いだろう!」
と真っ赤になった俺の顔を見て、母親は安心した笑顔を浮かべ
「そうよね。中学生で間違いなんか起こされたら、母さん
みちるちゃんのお母さんに顔向け出来なくなるもの」
そう言い放った。
(母さん……息子への信頼は?)
そう思った俺の気持ちをよそに、お互いの両親は俺達の交際を快く認めてくれた。
俺とみちるの付き合いは、みんなにオープンにしていた。
それでも、中学生のお付き合いなんて友達の延長みたいな可愛いものだ。
だから俺とみちるの関係性は、付き合う前と後とで何の変化もなかった。
あるとしたら、呼び方が「尚ちゃん」から「尚也」に変わったくらいだ。
両親からは「責任取れないうちは、手をだすな!」と
口酸っぱく言われていて、俺はそれを素直に守り続けていた。
みちるを傷付けたくなかったし、大切にしたいと思っていた。
大きく関係が動いたのは、中学三年の受験を終えた帰り道。
みちるが俺の手に触れて、俺がみちるの手を握り返した。
それは、幼い頃に握った手とは違い、
俺より小さな小さな柔らかい女の子の手だった。
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