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「残念でしたー。」その楽しそうな声と周りの笑い声だけがこの廊下に響き渡る。
今も私の耳に張り付いて離れない。
切られた長い髪は廊下に散らばり彼女らに踏みつけられた。
悔しくて悔しくて、泣いても泣いても髪は戻ってくるはずもなくただ切られていく髪を見つめることしか出来なかった。
直ぐに私の髪は短くなり彼女たちは笑いながら帰って行った。彼女達は人ではない。悪魔だ。
悪魔たちは満足したように話しながら帰っていく。
「帰りどこ行く?」「ゲーセン?」「飽きたー。」
そんな会話を耳にしながら私は呆然と座り込むことしか出来なかった。
1人の足音が聞こえたと同時に私の体が突き飛ばされた。
手首がじんじん痛む。そんなことも関係なくリーダーは私の顔を掴んで微笑んだ。
「掃除よろしくお願いしますっ。」
にやりと微笑むとまた突き飛ばした。
「えり優しー!」
グループのひとりがリーダーを後押ししきゃっきゃと笑いながらリーダーはみんなの元へ走っていった。
不揃いのスカートの丈がゆらりゆらりとゆれている。
私はノロノロと起き上がり放棄を片手に切られた長い毛を掃除した。さっきまで私の1部だった。自慢のロングヘア。
ふと鏡に写った自分をみると髪はボサボサ切り方が雑で長さも不ぞろい。アイツらのスカートのようだ。そんなことを考えまた涙がこぼれ落ちる。
髪を掃除し終わり投げられたかばんを拾って歩き始めた。
家まで10分近く。この髪は親にどう説明しよう。切られすぎてしまった。ロングが好きだった。そんなことを考えて今まででいちばん長い下校の時間だった。
ふとどんっと軽い衝撃が足に当たった。
「大丈夫!?」
遠くから若い女の声が聞こえてきた。
前を見ると小さな男の子が倒れていた
「ご!ごめん」
急いで立ち上がってその男の子を立ち上がらせた。
「怪我してない?大丈夫?」
男の子を見ると
「大丈夫!僕強いから!」
そういって微笑んでくれた。
「違うでしょ?ぶつかっちゃったらなんて言うの?」
女は男の子隣にしゃがみそう言った。
「ごめんなさい。」
しゅんとした顔で私のことを見た。
「いいよいいよ、私も考え事してたせいだから怪我してなくて良かった、」
そういってお母さんに深々頭を下げて歩き出そうとした。
「あ、ちょっと待って。どうしたの?その髪の毛。」
呼び止められてしまった。1番触れられたくない所だった。
「あ、大丈夫ですから、。なんでもないです」
「なんでもなくてそんな髪になるわけないでしょ。私一応美容師やってるんだけど、この子を送るついでに良かったら切ってく?」
女は微笑み私を見て髪の毛をなでた。
「サラサラだね、勿体ないなぁこんなにボサボサなの。お代要らないから切らせて?ね?」
「お母さんすごい上手なんだよ!」
男の子もそう微笑んだ。
この出会いが私の運命を大きく変えたのだった
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