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歩いてすぐのところに美容院があった。外装からオシャレでお花畑みたいな場所だった。
「じゃあここに座ってねー。でどうしてこのサラサラヘアがこんなボサボサになっちゃってる訳?丁寧にお手入れが行き届いてるし、なんもしなかったらこんなのにならないよね?」
女はそう言って私の髪をくしでとかした。
「え、えっと、実は。」
少し悩んだけど全部話すことにした。大人はすごく嫌いだった。何を言っても私が悪いと言うから。この人もきっとそうだ。どうせ髪も切ってくれなくなる。
そう思っていた私にとって女の返事は意外なものだった
「え?そんな酷いことされたの?先生は?なんもしてないの?私が学校に連絡しようか?お母さんは?知ってるの?」
すごくすごく心配してくれた。こんな人の優しさに触れる機会が初めてで、私の目からはまた涙がこぼれ落ちていた。
「あ、ごめんね。辛いこと思い出したよね。伸ばしてた髪を切るなんて同じ女としてどうなのかしら。」
そういいながらチョキチョキと私の髪を整えていく。
「周りの大人は被害妄想だって、相手してくれなくて、 それで、親にも言えなくて、」
私は初めてわかって貰えた初対面の女に泣きながら全部全部話した。
「周りも酷いよね。なんでこんな綺麗な髪を。」
トラウマとなったハサミの音が心地よく聞こえる。
女に髪を触れられるのは不思議と嫌じゃなかった。
「お母さん!もってきたよー」
男の子は満面の笑みで私を見た。
手にはお盆とコップが3つとジュースがあった。
「ありがと。そこ置いといてね。あなたりんごジュースは好き?」
「あ、はい、好きです」
「ならよかった。こんなとこだけどゆっくりしてねぇー。はいできた。」
鏡を見るとさっきまでと別人のような私が映っていた。髪を短くなった私。数十分前まであんなにロングが好きだったのに、いつの間にか私はショートがすきになっていた。
「あ、ありがとうございます、」
「よく似合ってんじゃん。こっちのほうが可愛いんじゃない?」
女はルンルンにその場から離れた
「おねぇちゃん可愛い!」
男の子も私を見て微笑んだ。
「はい、アレルギーとかない?置いておくから自由に食べて、元気出るまでここで休んでいきな」
女はクッキーの缶を目の前で開けて見せた。
小さく可愛いクッキーが何個も何個も並べられていた。
お菓子の職につきたい私にとってそれは目がくらむほど美しいものだった
りんごジュースをつぎ女は私の前に差し出した。
「名前は?家はこの辺?送っていこうか?」
「あ、えっと、せなです、長谷川せなって言います、家はこの近くなので、おかまいなく、」
他人は私の敵だと思っていた私にとってここまでの優しさが初めてで、また涙を流してしまった。
「まぁ色々あったんだと思うけど今の方が絶対かわいいよ。」
頭を数回撫でて女は微笑んだ。
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