3人が本棚に入れています
本棚に追加
私にとってのトレードマークを切り捨てた次の日。
制服に腕を通して鏡を見てみる。いつもと違う私がなんだかこそばゆくて。髪を3回ほど手ぐしでとかすと内側にくるんとまとまる。枝毛もなくさらさらで朝から学校に行くのがこれ程までに楽しみなのはいつぶりなのだろうか。
「おはよう。」
お母さんはお弁当を作りながら私をみた。
「おはよう。やっぱり似合ってるじゃないの、それに、なんか元気そうで安心したわ」
お母さんは優しく微笑みカフェラテを机に置いた
トーストとカフェオレの香り、サラダにドレッシングをかけ口に頬張る
外からちゅんちゅんとことりの声が聞こえてくる。
こんなに朝余裕があるのはほんとうに久々だった。
皿を片付けてお弁当をカバンにつめて家を出る
「行ってきます」
鏡の自分に微笑んだ。
「行ってらっしゃい」
お母さんの優しい笑顔。私はよくお母さんの笑った顔に似てると言われていた。
そんなことを思い出しながら朝からコンクリートと私の足が重なる音を聞きながら学校へ向かう。
足取りは軽い。必ず行った先には地獄が待っている。でも今日の私は違う。
下足に着くとやっぱり私の靴はなかった。
それでもいい。私は裸足のまま教室にいった。
いつも開けるのは怖い扉をゆっくりとあけて大声でいった。
「おはよう!」
目を開けると誰もいなかった。
もちろん私の机もない。
誰もいなかった安心感と孤独感。
そのまま私の机が置かれているであろうトイレに行ってみた。
やっぱりあった。水で濡らされて上にはマジックで落書きをされて。
学校に来るな、帰れ。死ね。そんな言葉がいっぱい書き連ねてある。
いつもはこれを見て落ち込んでいた。でも今日は違う。
「ぷはっ。毎朝毎朝ご苦労さま。ここまで来たらもう私の事好きなんじゃないの?遠回りのアピールはやめた方がいいよ。私結構鈍感だから。」
トイレの外から覗いているリーダー立ちに聞こえるように行ってみた。
パタパタと何人もが走っていく音が聞こえてきた。
びしょ濡れの机をふいて教室へ運ぶ。
慣れている。慣れている。
私は強くなった。
ショートカットの私は最強だ。
最初のコメントを投稿しよう!