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その10
高速を降りたところで、4人は路肩に駐車し、最後の休憩をとった。冷たい缶コーヒーが沁みる。
ここからは下道で、あと1時間ってとこ。
仲間が待ってるよ。
「さて、次は俺の番だな。」
「いや、俺がラストまで運転してもいいぜ!」
「…俺も。」
高架の下で、4人で缶コーヒーを傾けながら。
何もない道路なんだけど、この場所も、最初に休憩してからルーティンになっている。そういうの、意外と大事。
「ちょっと、いい?」
黙っていたアイヴィーが得意げな顔をして、後ろに回していた手をみんなの前に差し出した。
「アタシも、運転チームに混ぜてよ。」
「おーっ!」
「おーっ!」
ゴンちゃんとショージが同時に声を挙げる。
まっさらな、アイヴィーの運転免許。
「何だよアイヴィー、免許取ったのか?」
「だってさ、いつもみんなに運転させて悪いじゃん。アタシ、運転も平等にしたいって思ってた。松下のおばちゃんだって、配達の仕事をしてたって言ってたしね。アタシにだって、できるでしょ。」
「やるねえ、アイヴィー!」
ジャッキーもニコニコしている。
「取りたて初心者だからね。都内と高速は恐いなって思って、今まで黙ってたけど。田舎のあぜ道で、運転デビューさせて。」
「もちろんだぜ、アイヴィー!」
「じゃあ俺が、助手席でサポートするよ。ジャッキー、後ろ行ってくれ。」
「分かった。」
「ゴン、ありがと。」
アイヴィーはショージからキーを受け取り、運転席に座ると、ぎこちなくシートを調節した。
「教習車みてえにいい車じゃねえから、加速はかなり悪い。踏み込んでもすぐにはスピード出ないぞ。思ったよりも深く踏み込んでみな。」
「うん、分かった。」
「ウインカーかなり硬いから、動かない時は力を入れてグイッと回してみてくれ。大丈夫、壊れないから。」
「オッケー。」
シートベルトを締め、深呼吸をして、アイヴィーは前を向いた。
この道の向こうで。
みんなが、待ってる。
「よし、行こうかね!」
「ライヴハウスへ!」
「ライヴハウスへ!」
4人の拳が上がった。アイヴィーは颯爽とキーをひねった。
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