その11

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その11

一回。 二回。 三回。 「…あれ。」 アイヴィーはガチャガチャとキーをひねり続ける。 「ゴン、これで合ってる?教習車と違うから、合ってないかも。」 「まあ、古い車だからな…。」 さらに数回。車はうんともすんとも応えない。 「アイヴィー、ちょっと代われ。」 ゴンちゃんが助手席からキーを回した。 「おかしいな。さっきまでは普通に…。」 メンバーで代わる代わる、エンジンをかけようとしたが、“ズギューン!”の機材車は一向に動く気配を見せなかった。 「ちょっとエンジン見てくる。」 そう言って、ゴンちゃんは社外に出て行った。ほかのメンバーも後に続く。 秋の午後は急に冷え込んでくる。 あと3時間強で、今夜もイカれた宴が始まる…はず。 ゴンちゃんはショージと共に、しばらくの間ボンネットを開けて格闘を続けていたが、やがて顔を上げた。 「ダメだ、JAF呼ぼう。」
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