その4

1/1
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

その4

サービスエリアの標識が見えてきた。休憩まで、あと1キロ。 「アイヴィー、分かった。じゃあ、いま一番食べたいのはどこの何だよ!ただし“わらじとんかつ”は除いて!」 「あーっ。ショージ、それズルいよ。」 「ダメだ!お前の心の声を教えろ!」 アイヴィーはつかの間、考え込んだ。 車はサービスエリアへの入り口に差し掛かる。 「…あ、分かった。食べ物っていうか、お店だけど。」 ジャッキーが目を開けて、アイヴィーをチラッと見た。彼女の回答が気になる程度には、回復してきたらしい。 「…仙台の、日下さんのお店。」 前の座席で、ゴンちゃんとショージがパチンと手を合わせた。 「ホームラン食堂!あー、行きたい行きたい!ぜったい行きてー!」 「確かに日下君の料理、何でも美味いからなー。」 「ねえ、明日の帰りに、寄れたりしない?直帰じゃなくても、この行程なら寄れそうな気がするんだけど。日下さんに、久々に会いたいしさ。」 「日下君、いるのか?週末だからネイキッドのライヴ、かぶってねーか?」 「ショージ、ネイキッドのスケジュール調べろ。あとナビで道も調べといてくれ。」 ゴンちゃんはそう言って、ハイエースをサービスエリアの駐車スペースにピタッと停めた。 「いや、やっぱりショージじゃダメだ。ジャッキー、頼む。」 「…いいよ。」 「よし、明日はホームラン食堂だ、よし、カレー食うぞ!ハンバーグも食うぞ!」 「ショージ、その前に今から“わらじとんかつ”でしょ。」 「当然だ!ホームラン食堂のこと考えたら、余計に腹が減ってきた!さあ、食うぞ!」 ショージは勢いよく、機材車のドアを開けた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!