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その6
トンネルの中に入ると、心なしか車内の空気までひんやりするよう。内部の照明が、飛んでいくように次々と後ろに消えていく。ここまでの行程は非常にスムーズだ。
「常に新しい方、面白そうな方に動くのが、ショージのいいとこでもあるんだから。」
「アイヴィー、そんな慰めはいらねえ。」
「いやいや、ホントだよ。そういう積極性があるから、こうやって仲間も増えていくんだし。」
「まあ、今日の企画なんて、まさにショージの社交性あってのオファーだったしな。」
「そうだよ、ショージが去年の打ち上げで話を盛り上げてくれたから、じゃあ来年は向こうでやろう!って話になったんじゃん。」
「…まあ、まあな。」
「ショージは、うちの切り込み隊長だからね。その姿勢が長所なんだから、落ち込むことないよ。」
「お、おう。」
ショージはまんざらでもない顔でシートに座り直した。
トンネルを抜ける瞬間の音の抜け方が、アイヴィーは大好きだ。周りの風景が急に変わるところも好き。
「まあ、確かに新しいところに飛び込んでいくのは、俺の性分だからよ。飽きっぽいっちゃ飽きっぽいけどな。」
「“ズギューン!”は飽きずに続けてるけどね。」
「うちのバンドは常に挑戦の日々だろうが!飽きる要素が見つからねえよ。」
「それについちゃ、俺もショージに賛成だな。」
ゴンが引き取った。
「この何年、ずっと走り続けてきたけどな。レーベル所属、アイヴィーのこと、アメリカ、いま。それでも、まったく疲れることがねえんだ。こんなバンド、初めてだよ。」
「そっか…アタシにとっちゃ“ズギューン!”が初めてのバンドだからね。バンドって、こんなもんじゃない?って感覚しかないからなー。ジャッキーも、そうでしょ?」
返事の代わりにジャッキーはうなずいた。
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