その7

1/1

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

その7

「ゴンは”デスティーノ”が初めてのバンドだったの?」 「いや、その前にもやってたよ。その前は田舎でコピーバンドだったな。」 「へえ。コピー、何やってた?」 「ラフィンとかだな。俺はもっとハードコアやりたかったんだけど、何せ田舎だからよ。友だちでバンドやりたいってやつも限られててな。」 「コピーバンドかあ…アタシもやってみたかったなあ。それはそれで、面白そうだもんね。」 「まあ、コピバンはどうやっても、コピバンでしかねえけどな。こっち来てバンドを組んで、それがよく分かった。」 ゴンちゃんはそう言って、つるりと頭を撫でた。モヒカンは現地でセットする予定なので、今は髪を束ねて後ろで結んでいる。 「ゴンの最初のバンドも、デスティーノみたいなハードコアだったの?」 「いや、あれよりも結構重い感じだったよ。」 「俺、対バンしたことあったぞ!」 「へえ、ショージと対バンしてたんだ?」 「…いや、覚えてねえ。そうだったか?」 「おいっ、打ち上げで熱く話しただろうが!忘れんな!」 こんな二人の漫才みたいなやり取りが、ツアーのたびに繰り広げられる。アイヴィーはこれが毎回楽しみで仕方ない。 「ショージはその頃、どんなバンドやってたの?」 「おうっ、よくぞ聞いてくれた!その頃、俺はな…。」 おなじみのメロディー。スマホの着信音が、ショージの言葉を遮った。全員が無意識にポケットを探る。 鳴ったのはゴンちゃんのスマホだった。 「仕事の話だから、悪いけどちょっと静かにしててくれ。ジャッキー、次のパーキングで休憩しよう。」 「分かった。」 「おい!俺の話を聞け!俺が昔やってたバンドの話を、誰か聞いてくれ~!」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加