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その7
「ゴンは”デスティーノ”が初めてのバンドだったの?」
「いや、その前にもやってたよ。その前は田舎でコピーバンドだったな。」
「へえ。コピー、何やってた?」
「ラフィンとかだな。俺はもっとハードコアやりたかったんだけど、何せ田舎だからよ。友だちでバンドやりたいってやつも限られててな。」
「コピーバンドかあ…アタシもやってみたかったなあ。それはそれで、面白そうだもんね。」
「まあ、コピバンはどうやっても、コピバンでしかねえけどな。こっち来てバンドを組んで、それがよく分かった。」
ゴンちゃんはそう言って、つるりと頭を撫でた。モヒカンは現地でセットする予定なので、今は髪を束ねて後ろで結んでいる。
「ゴンの最初のバンドも、デスティーノみたいなハードコアだったの?」
「いや、あれよりも結構重い感じだったよ。」
「俺、対バンしたことあったぞ!」
「へえ、ショージと対バンしてたんだ?」
「…いや、覚えてねえ。そうだったか?」
「おいっ、打ち上げで熱く話しただろうが!忘れんな!」
こんな二人の漫才みたいなやり取りが、ツアーのたびに繰り広げられる。アイヴィーはこれが毎回楽しみで仕方ない。
「ショージはその頃、どんなバンドやってたの?」
「おうっ、よくぞ聞いてくれた!その頃、俺はな…。」
おなじみのメロディー。スマホの着信音が、ショージの言葉を遮った。全員が無意識にポケットを探る。
鳴ったのはゴンちゃんのスマホだった。
「仕事の話だから、悪いけどちょっと静かにしててくれ。ジャッキー、次のパーキングで休憩しよう。」
「分かった。」
「おい!俺の話を聞け!俺が昔やってたバンドの話を、誰か聞いてくれ~!」
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