その9

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その9

高速は少し混んできたようだ。ショージは車の合間を縫って、少しでも前に出ようとしている。 「ジャッキー、アプリを作ってるんだっけか?」 「そう。」 「すげえよな。何をどう作るのか想像もつかねえが、人の役に立つものを作れる才能ってのは大したもんだよ。」 「…役に立ってるかは分からないけど。」 「どんなアプリだ?」 「…説明するのは難しい。企業向けだから。」 「システム管理とか、そういうやつか?俺にはサッパリ分からねえけど…。」 「まあ、そんな感じ。」 ジャッキーはほとんど喋らないけど、かと言ってツアー中、ずっと自分の内にこもっているわけでもない。打ち上げでも、リハスタでも同じ。 だんまり無表情ながら、彼がみんなとの会話を楽しんでいることを、今では3人ともよく知っている。 「この子が社会人になったら、いったいどうすんだろ?って、アタシはお母さんみたいに心配だったけどさ。」 「…年上だけど。」 「あはは、確かに。でもジャッキーは自分のこと、よく分かってるよね。ちゃんと自分に合った仕事を見つけたんだもんね。」 「おかげさまで。」 「おい、アプリって儲かるのか?」 忙しなくアクセルを踏みつけながら、ショージが勢い込んで聞いてきた。 「粋じゃねえなあ、ショージ。」 「儲かるかどうかだけが重要じゃないでしょ。」 「だって、気になるだろうがよ!」 ジャッキーが口にした金額に、3人の口があんぐりと開いた。 「…マジかよ。」 「ジャッキー、すごいじゃん。」 「おい!俺もアプリ作るぞ!」 ショージが叫びながらアクセルをふかした。 「…毎回そんなに入るわけじゃないから。」 「俺もアプリで一発当てたい!」 「ショージお前、そのアプリのダウンロードすら、できねえってジャッキーに任せてるじゃねえか。」 「これからは俺がアプリをダウンロードする!アップロードもする!俺はアプリ王になるんだ、うおー!」
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