からくり父娘(おやこ)

8/8
前へ
/8ページ
次へ
 程なくして谷田部の大殿は息を引き取り、若様は藩主の座に就くと同時にキヨを娶った。病で死ぬはずだった一人娘を藩主の正妻に迎えられ、伊賀七は泣いて喜んだという。  二人に子は無かったが、近隣の名家から幾人かの養子を迎え、実の親子のように仲睦まじく暮らしたとの事だ。  維新後も若様の家は残り、廃藩置県によって知藩事を免職された後も子爵として厚遇され、貴族院議員を務める程に永く栄える事となる。  そんな若様を側で支えたのが、からくり伊賀七が作り出したからくり細工の女子(おなご)であった事は、歴史の影にひっそりと秘められた、知る人ぞ知る逸話である。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加