からくり父娘(おやこ)

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 キヨは伊賀七の妻ハナが自らの命と引き換えに産み落とした忘れ形見だった。  ハナによく似た瞳の大きな器量良しで、伊賀七はなんとしてでもこの子を一人前に育て上げ、ゆくゆくは後継ぎとなる立派な婿を見つけてやろうと意気込んだものの、残念な事に、似ているのは外見だけではなかった。  キヨはハナ同様、生まれつき身体が弱く、床に伏せてばかりいた。一晩中ごほごほと咳が止まらぬ日も多い。成長するに従い悪化の一途を辿る病状に、キヨが十五歳を迎える直前、高名な医者に診てもらう事にした。  診断の結果、生まれながらにして肺を患っていた事がわかった。治る見込みはなく、このまま少しずつ衰弱し、死んでいくのを見守る他はないと、無情にも医者は告げた。  キヨが不治の病に冒されている事は近所でも噂になり、悲しみに沈む伊賀七にかける言葉も見つからず、飯塚の屋敷には誰も寄り付かなくなった。伊賀七もまた家に閉じこもったまま、静かに時だけが過ぎた。  そうしたある日の事――そろそろキヨの体力も限界だろう。また飯塚の家で葬式を出すのかと噂している人々の前に、ひょっこりキヨが現れた。 「おかげ様で元気になりましたので、またよろしくお願いします」  にこにこと満面の笑みを浮かべながら挨拶して回るキヨは別人のようで、人々は驚きを隠せなかった。  実はこの時キヨの体は、伊賀七の手によりからくり細工に生まれ変わっていたのである。
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