あのゴーストペンションで

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* 帰りのバスに乗って、藍高(あいこう)に戻った。 隣のタチバナは、まだ不機嫌そうな顔で、車窓を流れる景色を見ている。 まあ、気まぐれな人だから仕方ない。 「アメちゃんなめる?」 あたしは、後ろの席の、リンゴちゃんとコハクを振り返った。 「あ、はい、ありがとうございます!」 「それでどう? シナリオ、書けそう?」 「なんとか、がんばります」 あたしはリンゴちゃんの手のひらに、アメちゃんをふたつ、ポトリと落とした。 ――ん? なんだかリンゴちゃんのほっぺたが赤いみたい。 コハクも下をむいて、ソワソワしている。 もしかして、ふたり、いま、手えつないでた?  ああ、この子たちも、何かあったのかもしれないな。 あのゴーストペンションで。 (おしまい)
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