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心霊スポットには、ついでにコハクを誘ってやった。
コハクは、アーモンド型の目をした小生意気な一年で、リンゴちゃんに恋心を抱いているのだ。
あたしとタチバナ、リンゴちゃんとコハク。
うん、おあつらえ向きじゃないですか。
部長に「シナリオの取材に行く」と伝えて、あたしたち四人は、制服のまま学校を抜け出した。
*
目指すのは、「白樺ペンション」、通称「ゴーストペンション」というところだ。
田舎道を三十分ほどバスに揺られた。
まったく誰が利用するのか、首を傾げたくなるようなバス停で、あたしたちはバスを降りた。
周りには民家の一軒も見当たらず、両脇には薄暗い樺の林が広がっている。
バス停に沿って二、三百メートルほど歩き、目印の看板で折れて、鬱蒼とした林の中の砂利道を進む。
本当にこの道でいいのかと、不安に思い始めた頃、突然視界が開けて、こじんまりしたペンションが、目の前に現れた。
もとは瀟洒な建物だったのかもしれない。
だけど今は、見る影もなく、荒れ果てている。
全体的に色はくすんで、壁にカラースプレーで何か落書きがしてある。
ガラス窓には、やぶれたカーテンがかかっていて、中の様子はうかがえない。
「うわあ。いかにもって感じだねえ」
タチバナが、黒目をらんらんとさせて、そう言った。
「気がのらないって言ってたくせに」
あたしは、少しあきれて言う。
「ウン。行く前は、面倒だなあって思ったんだけどさ。いざ来てしまえば、楽しくなってきたよ。そういうことってない?」
タチバナは、気まぐれ自由人だから、そういうこともあるだろう。
あたしはため息をついて、「それよりさ」と言った。
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