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演劇部の後輩の一年生――リンゴちゃん、ことリコちゃんが、今度の公演のシナリオを書くことになった。
ところがネタが思い浮かばないらしくって、ウンウン腕を組んでうなっている。
「リンゴちゃん。シナリオどーお?」
聞いてみたら、リンゴちゃんは、チェリーピンクの口もとをふにゃりとさせた。
「先輩。実は……」
「実は?」
「すすんでないです……全然」
消え入りそうな声で言う。
あたしはハッパをかけようと、その制服の背中をたたいた。
「頼むよ。リンゴちゃんが書かないことには、みんな練習できないんだからね!」
「みそら。そうプレッシャーを与えるなよ」
あたしに向かって、そう言ったのはタチバナだ。
「知ってるかい?
アイディアっていうのは、リラックスしている時にしかおりてこないんだって。だから、散歩とか風呂の中とかがいいんだってさ。
書こう、書こうって意気込んでると、かえって書けなくなるわけだ」
「なるほど」
リンゴちゃんはうなずいた。
「じゃあわたし、お風呂入って、出直してきますね……」
「行ってらー。っておい。リコよ……」
タチバナが、リンゴちゃんの頭を軽く小突いた。
タチバナはいちおう、あたしの彼氏だ。
リンと涼しげな一重の目と、猫のように気まぐれなところが魅力的だと、あたしは常々思っているわけで……、
つまりあんまり目の前で、違う女の子と楽しそうにされると、多少モヤッとしないでもない。
しないでもないけど、まあよかろう。
あたしは広い心を持っている。
リンゴちゃんのために、何かネタをさがそうと、部室の端っこの、スチール棚を漁ってみた。
「高校演劇のすべて」、「サルでも書ける脚本術」「若松タウンガイド」、うーん、どれもありきたり、つまんなそう。「月刊BANANA JUICE」
なんだこれ?
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