うそつきな目覚まし時計

1/7
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

うそつきな目覚まし時計

 ピピピ、ピピピという電子音と共に聞き慣れた音声が耳に流れこんでくる。 『現在、午後9時50分です』  俺は目をこすりながら目覚まし時計に無意識のうちに言い返す。 「どうせまた嘘だろ……」  電子音は鳴り続け、目覚まし時計は現在時刻を喋り続ける。 『現在、午後9時51分です』  俺はアラームを止めようと、目覚まし時計を手に取った。  目覚まし時計に表示された時刻は、9:51となっている。  時が止まった気がした。  それから俺は「だああああああああ」と叫んだ。  布団を蹴飛ばしてベッドを転がり降りて、洗面所で顔を洗う。  狭い寝室に戻ってくると、目覚まし時計に向かって文句を言った。 「こんな時は早く起こさないんだな!」  もちろん、目覚まし時計が言い返してくることはない。  俺は急いで壁にかけた服に着替え、牛乳だけを胃に流し込んでカバンを持って家を出た。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!