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うそつきな目覚まし時計
ピピピ、ピピピという電子音と共に聞き慣れた音声が耳に流れこんでくる。
『現在、午後9時50分です』
俺は目をこすりながら目覚まし時計に無意識のうちに言い返す。
「どうせまた嘘だろ……」
電子音は鳴り続け、目覚まし時計は現在時刻を喋り続ける。
『現在、午後9時51分です』
俺はアラームを止めようと、目覚まし時計を手に取った。
目覚まし時計に表示された時刻は、9:51となっている。
時が止まった気がした。
それから俺は「だああああああああ」と叫んだ。
布団を蹴飛ばしてベッドを転がり降りて、洗面所で顔を洗う。
狭い寝室に戻ってくると、目覚まし時計に向かって文句を言った。
「こんな時は早く起こさないんだな!」
もちろん、目覚まし時計が言い返してくることはない。
俺は急いで壁にかけた服に着替え、牛乳だけを胃に流し込んでカバンを持って家を出た。
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