神と暮らした男 全文

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 凱旋した真木に民人が歓喜の声を上げた。そして数日の祝宴が執り行われた後には、真木の名が御真木(みまき)に変わっていた。再び平穏な暮らしを取り戻した邪馬台国は、数年後、大陸へ朝貢の使いを送った。それは魏を滅ぼし、新しい国家となる晋への友好の使いであった。 「御真木様、よくぞここまでお助け下さいました。正に日神子女王が言われていた通りの救い人にございます」  平穏な暮らしが続く日の午後、官女を遠ざけた殿舎で対面した壱与が語り掛けて来た。 「この上は私を娶り、大王として政を束ねて頂けませんか。民人も平穏が戻り、田畑からの恵みも増して、喜び勇んでおります。ここで慶事が続くことになれば、更に晴れやかとなり、全ての者が大王に従うことになりましょう」  顔に恥じらいを見せながら壱与が続けている。 〈俺が大王か。それも無きにしも非ず〉  真木は、黙って頷いた。 「そうですか。ならば直ぐにも準備を始めねば」  数日後、諸国から王も招いた祝宴が大々的に催された。そこで真木が語ったのは、全土の広さであり、全ての国々を束ねる壮大な話であった。  この翌年、全軍を率いた真木は東征へと向かう船の船首に立っていた。  後に御真木は御間城(みまき)と呼ばれ、諡(おくりな)を崇神とされた。 参考資料 ・邪馬壹国の歴史学      古田史学の会編  ミネルヴァ書房 ・卑弥呼の時代        近江昌司著    学生社 ・邪馬台国と地域王国     門脇禎二著    吉川弘文館 ・古代の装い         春成秀爾著    講談社 ・地形と地理で読み解く古代史 藤原清貴編    洋泉社
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