しげしの道 A. 天使と悪魔

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 1 . マリアの園で  『 聖母マリア園 』  ぼくが通った、幼稚園の名。  1日に3回、お祈りの時間があった。  遠足、運動会等、行事の前日。  全員で、近くの教会へ行き、祈る。  「 明日、晴れにしてください 」  などと、午前中ずっと。  ( 記憶が正しければ )    両親は、キリスト教徒ではない。  『 近い ・ 安い ・ 遅くまで預かる 』  で、深く考えず、この幼稚園に通わせた。  それが、不幸の始まり?  息子が、キリスト教に『 かぶれた』。  「 天のお父様を信じていない 」  などと、両親に逆らい始めた。  『飯抜きの刑』も、恐れなかったとか。  迫害に耐え、殉教する覚悟だった ?  まさか、それは、なかったと思うが。  しかし、やがて、母親は発見した。  この、恐るべき息子の弱点を。  「 副園長先生に言いつけるよ!」  この一言が、絶対的効き目ありと。  そんなに、副園長先生は怖かったのか?  怖かった。  ただの怖さじゃなかった。  実は、この世の者ではなかったので。  では、何?  天使様、だった。  『天使のように優しい人』  などという、『たとえ』ではない。  確かに、副園長先生は優しい笑顔の女性。  が、ぼくは、ひたすら怖かった。  だって、人の心が読めるのだから。  本当なのだ。  そう信じざるをえない決定的体験が。  今でも、あまりにも克明に覚えてる。  自分自身でも、不思議なぐらいに。  (『2.天使を試す』に続く)
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