しげしの道 A. 天使と悪魔

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2 . 天使を試す  「 副園長先生は、天使?」  悪ガキ仲間で、激論した事があった。   『 天使派 』の主張。  ① 「 天のお父様のお使い、天使様 」   と、他の先生もみんな言っている。  ② 他の先生が見抜けない嘘も、必ず見抜く。  ③ 服装からして、他の先生と違う。   ( 教会のシスターの服装をしていた )   『 人間派 』の主張。  ① 「 まるで、天使のような人」   と、他の先生は、言っているだけ。  ② 嘘を見抜くのは、カンがいいだけ。  ③ 背中に、天使の羽根がない。  「 試してみよう!」  誰かが言った。  一瞬、シーンとなった。  「 試す・疑うは、最もいけないこと 」  そう、この幼稚園では、教えられていたので。  すったもんだの末、試すことになった。  すぐ後が、昼食前のお祈りの時間だった。  このお祈りには、特別なルールがあった。  まじめに祈った順番が、とても重要なのだ。  その順に、好きなパン・飲み物が選べたので。  最初、皆で、同じお祈りの言葉を唱える。  その後は、一人一人が、心の中で祈る。  ひざまずき、手を合わせ、目を閉じ……。  好みのパン、飲み物をゲットしたい。  みんな、熱心に、一生懸命に祈る。  少なくとも、熱心に祈るフリはする。  当時、ここの幼稚園児は、60人程。  全員の、まじめに祈る順を決める。  そんな事が、できるわけがない。  そう、『 人間 』には不可能。  だが、副園長先生は、できたのだ。  まじめに祈れば、すぐ名を呼ばれる。  まじめに祈ってないと、呼ばれない。  心が読めるとしか思えなかった。   『 天使かどうか、試す方法 』  ① ジャンケンで2人を選ぶ。  ② 2人はいっさいお祈りしない。  ③ 天使かどうかの判断基準。   2人とも、最後まで、残された場合。     → 副園長先生は天使。   どちらか一方でも、早く呼ばれた場合。     → 副園長先生は天使ではない。  最初にジャンケンに負けた子。  淳子ちゃん、『人間派』代表。  「まかせといて」とでも、言いたげな表情。  2人目、ぼくが負けた。  パニック。  震えが止まらない状態に。  悩む間もなし。  お祈りの時間を告げる鐘が鳴り響く。  「 裏切るなよ!」  みなの目が、そう、ぼくに。  (『 3.第一の弟子』に続く)
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