85人が本棚に入れています
本棚に追加
4 . 天使の贈り物
『 迷える子羊 』も『 天使 』から巣立つ時がきた。
卒園式の日、副園長先生は、皆に、贈り物をした。
「 これは、園長先生からのプレゼントです 」
( 園長自身は、一度も、姿を見せなかった。
『 園長室 』の西洋人の写真が『 園長 』とされていた。)
贈り物は、金色に輝く、十字架の首飾り。
「 悪魔が逃げ出す不思議な力 」
が、この十字架にはあるのだと言う。
「 みなさんは、天のお父様の幼稚園を離れます。
これからは、悪魔に試される事もあるでしょう。
この十字架を、常に身につけ、お祈りをなさい。
そうすれば、悪魔が、決して、寄り付きません。」
めちゃくちゃうれしかった。
悪魔払いのお宝を、ゲットしたのだから。
「 見て、悪魔を追い払う金の十字架!」
と、家族や近所の子に見せて回った。
何かとケチをつけられることもあった。
が、いっさい耳を貸さず。
『 や~い、うらやましがってる 』
などと思っていた。
天使様の言葉に従い、常に肌身離さず。
ところが。
『 悪魔の手先 』が思わぬ所に。
母である。
『 キリスト教に、息子を奪われた。
どんな手を使っても、取り返さなければ。
目障りなのは、あの、十字架の首飾り。
まず、あれを、なんとかしよう。』
そう、悪魔の手先は、たくらんだのだった。
「 寝る時だけは、はずしたら?
寝返りの時、鎖で首が、締まるかも。
鎖が、切れてしまうかもしれないよ。
一度切れたら、もう、つなげない。
大切なら、枕元に置いて、寝たら?」
『 ナルホド 』という気がした。
眠るときだけは、はずすことに。
「 お風呂に入る時は、はずしたら?
お湯につかると、錆びて汚い色になる。
せっかくきれいな金色、もったいない。
大切なら、服の上に置いて入ったら?」
これまた、『 ナルホド 』という気がした。
風呂に入る時も、はずすことに。
卒園後、お祈りが、だんだん、短かくなっていった。
日に3回すべきと言われてたお祈りが、2回に。
そして、やがて1回に。
さらには、それさえ、さぼる時も……。
『 だいじょうぶ!
十字架の力で、悪魔は寄り付かない。』
などと、考えていたのだが ……。
(『 5. 失われた十字架 』に続く )
最初のコメントを投稿しよう!