しげしの道 A. 天使と悪魔

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4 . 天使の贈り物   『 迷える子羊 』も『 天使 』から巣立つ時がきた。  卒園式の日、副園長先生は、皆に、贈り物をした。  「 これは、園長先生からのプレゼントです 」  ( 園長自身は、一度も、姿を見せなかった。   『 園長室 』の西洋人の写真が『 園長 』とされていた。)  贈り物は、金色に輝く、十字架の首飾り。  「 悪魔が逃げ出す不思議な力 」  が、この十字架にはあるのだと言う。  「 みなさんは、天のお父様の幼稚園を離れます。   これからは、悪魔に試される事もあるでしょう。   この十字架を、常に身につけ、お祈りをなさい。   そうすれば、悪魔が、決して、寄り付きません。」  めちゃくちゃうれしかった。  悪魔払いのお宝を、ゲットしたのだから。  「 見て、悪魔を追い払う金の十字架!」  と、家族や近所の子に見せて回った。  何かとケチをつけられることもあった。  が、いっさい耳を貸さず。  『 や~い、うらやましがってる 』   などと思っていた。  天使様の言葉に従い、常に肌身離さず。  ところが。  『 悪魔の手先 』が思わぬ所に。  母である。  『 キリスト教に、息子を奪われた。   どんな手を使っても、取り返さなければ。   目障りなのは、あの、十字架の首飾り。   まず、あれを、なんとかしよう。』  そう、悪魔の手先は、たくらんだのだった。  「 寝る時だけは、はずしたら?   寝返りの時、鎖で首が、締まるかも。   鎖が、切れてしまうかもしれないよ。   一度切れたら、もう、つなげない。   大切なら、枕元に置いて、寝たら?」  『 ナルホド 』という気がした。  眠るときだけは、はずすことに。  「 お風呂に入る時は、はずしたら?   お湯につかると、錆びて汚い色になる。   せっかくきれいな金色、もったいない。   大切なら、服の上に置いて入ったら?」  これまた、『 ナルホド 』という気がした。  風呂に入る時も、はずすことに。  卒園後、お祈りが、だんだん、短かくなっていった。  日に3回すべきと言われてたお祈りが、2回に。  そして、やがて1回に。  さらには、それさえ、さぼる時も……。   『 だいじょうぶ!   十字架の力で、悪魔は寄り付かない。』  などと、考えていたのだが ……。  (『 5. 失われた十字架 』に続く )
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