君たちはどう生きるか

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君たちはどう生きるか

……!?!?!?!! どう、何を、どう言えば良いんだろうな?????????何から言えば良いですか???こんなに感想が上手く出てこないのは初めてで。あぁ……宮崎駿……本当に本当にすごいお人だ。 まず今、こうやってジブリ作品が見られるという事実に胸を打たれてしまった。いっさい妥協のない作画が、えげつない枚数と動きで繰り出される。すごい。やっぱりジブリってすごい。これがアニメーションの頂点かって。これだけでも劇場に見に行く理由としては十分だった。 ストーリーは序盤、いつものジブリ作品のように見えていた。農村回帰をテーマに据えているのだと思い込んでいた。全然違う。宮崎駿流不思議の国のアリス。しかもメタファーだらけの。その情報量に脳を焼かれているが自分なりに少しずつ解いていこうと思う。まず、キリコさんのキャラ造形が本当に良かった。今回のボーイミーツガールのガールかな?と思ったがリンのようなポジション。めちゃくちゃに姉御肌でかっこいい。結婚してほしい。正直、キリコさんと出会った場面らへんで展開された世界が一番好きだ。死後の国とも何ともつかない奇妙な世界。宮崎駿の死生観を垣間見るのが好きで千と千尋の電車のシーンも私は大好きだ。ただ、今回の異世界はそれを何々と確定させることはできない。作中ではっきりと答えが示されることもない。これは考えても答えが出そうにないのでいったん考えるのをやめる。 押井守ファンとしては眞人の夢、石の墓、キリコさんの家が在った島でたいそう興奮した。眞人が夢から覚めるシーンは水中から浮かぶ、という演出がなされていた(はず)。超既視感……押井守の攻殻機動隊!!!!!!!!宮崎駿は本人は見てないと言ってたけど実は見ていてオマージュだったら良いな~と思っただけ。思っただけ。石の墓に関してはストーンヘンジに似ていた気がする。ストーンヘンジと言えば押井守と宮崎駿と鈴木敏夫が旅行した時に行っていた!!!!!!!未だに印象に残ってこうやって作品に残しているんだとすればすごく良い。良い。キリコさんの家が在った島は船の形をしていた。これは深読みかもしれないが方舟。土地が方舟の形をしているとすれば押井守の天使のたまご。この異世界と天使のたまごの雰囲気はよく似ている。そして方舟につきものなのは鳥。おや!?宮崎駿の天使のたまごへの評価は「努力は評価するが他人には通じない」冗談抜きで天使のたまごへのアンサーかもしれない。そう思い始めてしまった。押井守ファンの戯言なので。はい。 色々あって異世界から義母を連れ出せるがその色々がすさまじい。ボーイミーツガールのガールが母と義母。そっそれはあまりに性癖を詰めすぎているのでは……!!!!!!驚かないけど……。この義母、夏子さんがあまりに艶っぽくて美しい。そりゃあ眞人くん拗らせる。夏子さんが産屋で眠っているシーンはあまりにも良い。これを見てしまっていいのだろうか……という思いに駆られてしまう。なんたる背徳感。夏子さんの怪しい美しさとあの紙の束が回る演出で「禁忌」を体験できてしまうわけだ。反対に母、ヒミははつらつな少女として描かれる。バターとジャムをたっぷりと塗ってさしだすあのあたたかさ、母性。終盤は今までのジブリ作品のヒロインのようなムーヴをかましていたのでこっちがひやひやしてしまった。そんなヒロイン(母)たちと腐れ縁の友達、アオサギ。アオサギはメタ的に見て鈴木敏夫なんだろうなぁ、とそんな気がした。俗っぽくて、なんだかんだ一緒に過ごしてきた、口には出さないけれど大事な友達。じゃあ高畑勲がどこにおさまるかといえば大叔父か、もしくはヒミ。ヒミ説推していいですか? と、なるとこの作品めちゃくちゃに自伝的な要素が強い。あの異世界は宮崎駿の描いてきた世界そのもの。そういえば既視感があった。ジブリ作品のセルフオマージュが散りばめられていたからだ。多分。その宮崎駿の世界に後継者はいない。崩れゆく世界から現実に戻るのだ(あのやりとりは漫画版ナウシカの終盤とそっくりだ)。こう書くと現実に戻りなさい、というメッセージが込められているように思えるがそんなことはない。眞人はあの人形を手にしていたため、あの世界の記憶があるのだ。ここは千と千尋のあの下りにもよく似ている。すごく、肯定的に描いてくれている。私たちがアニメーションと共に過ごした時間は消えることはない。シンエヴァも最後は現実に戻るが君生きとは真逆の描き方だと思う。あれは庵野監督とファンをエヴァから卒業させ、現実へ還らせるための儀式でもあったように思える。だからこそ新規のファンであった私はすこし突き放されたような気がして、正直落ち込んだ。これはこれで嫌いじゃないけれど。君生きは優しく現実に送り出してくれた。インコだって形を変えたけれど現実にちゃんと戻っている。すべて、きえてなくなることなんてない。なんて優しいんだろう。やっぱり宮崎駿はエンターテイメントの怪物だ。人を楽しませることを何よりも大事にしている。難解ではあったけど冒険活劇として胸が弾んだ。少年少女が少年少女として楽しく生きていた。歳をとってもこんなに信念を貫ける人っているんだろうか。スタッフロールを見終わって、『宮崎駿』に涙しそうになった。すごい、すごいよ宮さんは。久石譲の音楽もとてもよかった。サントラ、はやく聴きたい。 それからスタジオカラー、production I.G、スタジオ地図、ufotable……名だたる制作会社が協力していたのを見てぐっとくるものがあった。いうなれば日本アニメーションの総決算だ。それだけでなんだか幸せな気分になれてしまった。 多分一生かけても消化しきれる作品ではないんだろうなあと思う。宮崎駿が好き放題やってくれたから。でもその好き放題を見られてよかった。幸せだった。ありがとう。 ここまで書いて、君生きはシンエヴァの対極に位置する作品だと気づいた。現実とアニメに対する立場もそうだが、シンエヴァは父と子、君生きは母と子の物語に思える。それだけ。この師弟、やっぱり大好きだ。 それから情報を何も得ずに映画に臨めたのは貴重な体験になった。鈴木敏夫……やるな……この戦略がどう出るかは未知数だが、どっちにしても万人受けする作品ではないので良かったのでは。私は良かった。 パンフレットほしいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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