君と桜と嘘のこと

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 学期の途中で、学級委員だったクラスメイトが転校してしまったので、後任をどうするか、ホームルームで話し合われたのは月曜のこと。  結局、クラスの投票と最終的にはペアとなる落合さんの意思を尊重して決めようということになり、投票の前、候補にあがったのが、僕と数名の男子の名前だった。  学級委員なんて、僕にはとても務まらない。けれど、落合さんと一緒に過ごす時間が増えるかもしれないというのは、プラスだった。落合さんはロングヘアの正統派の美人で、礼儀正しく穏やかで女子にも男子にも好かれている。僕は中学に入学した時から気になっていて、片想いは三年目に突入する。  落合さんが誰のことを好きなのかはわからないが、サッカー部の誰か、という説が有力だ。当然僕はサッカー部ではない。  中野も落合さんのことを好きだと知ったのは一学期の終わりだった。 「落合さんって、どこの高校を目指してるのかな。知ってる?」  そう訊かれて僕は一瞬硬直した。その前の週、偶然職員室で担任の島田先生と落合さんが受験する高校について話しているのを聞いてしまったからだ。  冷房の効いていない教室で頭から垂れる汗を拭いながら、僕はその場を動くことができなかった。落合さんの第一志望を知っている。知らないと嘘はつけない。 「知ってるよ」 「え、まじ? 教えて」  それから中野は、早速夏期講習のプランを変更して、落合さんと同じ高校を目指し始めた。  二学期になると、夏休み期間中、一緒に勉強したのか、中野と落合さんの距離は急速に縮まっていた。落合さんは中野の部活が終わるのを待つようになり、時々三人で一緒に帰ることもあった。
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