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「あんなワガママ放題で性格の悪い麗華なんかと結婚するなんて、勘弁してほしいね」
万里小路氏は、心底イヤそうな顔をした。
——でも、性格的には「似たもの同士」のお似合いカップルだったんじゃないのかな?
「あいつは大橋と同じく、中学・高校の同級生だったんだ。
……付き合ってしまったのは、まさしく若気の至りだな。
今となってはお互い『黒歴史』以外の何物でもないよ」
万里小路氏はそう言って肩を竦めた。
——ええっ、万里小路さんは、麗華さんとも同じ歳なのっ⁉︎
あたしはそちらの方にびっくりしてしまって、思わずムンクの叫びになった。
「……悪かったな、老け顔で」
あたしが思ってしまったことを察した万里小路氏が、ムッとした顔になる。
——いやいやいや、
彼らが異様に「若い」だけで、あなたは「年相応」ですから……
「とにかく、座って」
万里小路氏からぐいっと腕を引かれて、ソファの座面にすとんと腰が落ちた。
「あ、あの……」
そして気がつけば、彼の腕の中にすっぽりと包まれるような体勢になっていた。
——ど、ど、どうしたんですか?
ち、ち、近いんですけど?
「麗華が来たら『演技』するから、きみもおれに合わせてくれよ?」
万里小路氏があたしの耳元で囁く。
——え、『演技』って……?
あたしは彼を見上げた。
そこには、彼が「中谷さん」だったときの……
あの穏やかな微笑みがあった。
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