2468人が本棚に入れています
本棚に追加
そのとき、♪ピンポーンと軽やかなインターホンの音が鳴った。
スマホのディスプレイに、玄関のドアの前に立つ麗華さんの姿が映る。
『麗華よ。早く開けてちょうだい』
彼女を確認した万里小路氏がスマホを操作して、玄関のドアを解錠した。
ドアを開けて玄関の中に入ってくる彼女の様子が、ディスプレイに映し出される。
——もうすぐ、このリビングにやってくる。
あたしは、近すぎる万里小路氏との距離を取るため、ソファの端に移動しようとした。
ところが、そのとたん、すかさず彼の腕があたしの腰にまわされて、がしっと「固定」された。
それでも、少しでも離れようと捥いていたら、もっと彼の方へ、ぐいっと引き寄せられてしまった。
——お、お互いの身体が……
み、密着してるんですけれども……っ!
思わず万里小路氏の顔を見ると、至近距離で目が合った。
すると、彼が「中谷さん」のように、やさしく微笑んだ。
その瞬間——あたしの心臓が、どきり、と音を立てた。
——この笑顔が、彼の「演技」だと……
わかっているのに……
最初のコメントを投稿しよう!