Last Chapter

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あたしは、目を逸らして俯いてしまう。 ——頬が、熱い。 だけど、そんなあたしを見て、彼の笑みがさらに深くなっていく。 そして、彼の左右の大きな手のひらで、あたしの両頬をすっぽりと覆って、俯いていた顔をくいっと持ち上げた。 今度は、頬が「固定」されてしまった。 あたしたちの目が、まるで吸い込まれていくみたいに……また合う。 今度は、彼の目から離れなかった。 いや——離れられなかった。 私を見つめる彼の穏やかな微笑みが、いっそう深くなっていく。 あたしのことが「好きで好きでたまらない」というみたいに(とろ)けるほどに甘い笑顔になっていく。 ——あぁ、すっかり勘違いしてしまいそう…… だけどこの瞬間、きっとあたしだって彼のことを、潤んだ瞳で、熱い眼差しで、うっとりと見つめているに違いない。
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