Last Chapter

14/32
前へ
/145ページ
次へ
「……わたしと華丸百貨店の御曹司とのお見合いが、とうとう決まったの」 麗華さんは「事情」を話し始めた。 ——そうだ、思い出した。 彼女は老舗デパートの松波屋の社長令嬢だった。 「松波屋(うち)と華丸が合併することになったことで『政略結婚』の話が持ち上がったんだけど、それまでだってお見合いの話は『仕事が忙しいから』って言って、ことごとく逃げまくってたのよ。 ところが……最近、専属の雑誌が休刊になって、二十代の頃からやってきた雑誌モデルの仕事が、ついになくなっちゃって。 三十代の雑誌モデルってね、結婚して子どもを産んでも綺麗っていう『ママタレ』でないと、なかなか需要がないのよ。 それで、『次』が決まらないでいたら……」 そこで、ふっ、と翳りのある表情になった。 「もともと、うちのコネで入った芸能の世界だし、何年経っても女優の仕事はおろかタレントでもなく、雑誌モデル以外にはスキルのないわたしなんて、身内からはそろそろ引退する『時期』だと思われたみたいでね。 ……あれよあれよという間に、外堀を埋められちゃったわ」 「バカだな。好きな男とさっさと結婚していたら、こんなことにはならなかったものを。 おまえ、結婚を考えるヤツいなかったのか?」 万里小路氏が呆れた口調で訊く。 「いたわよ。いたけど……でも、知らない間に二股かけられてて……ある日突然、向こうの方と結婚したって知らされたのよ」 ——うっ、それはひどい。そして、ツラすぎる。 でも、こんなに綺麗な人でも、そんな目に遭ってるんだ……
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2468人が本棚に入れています
本棚に追加